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しろネコの気ままな日々

風と光と水の流れ☆ 今69歳 過去も含め 今を大事に 本音で綴ります

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短編小説 ≪お墓は迷路の先≫


その日主人は車の中でいつになく饒舌だった。
私は少し戸惑ったが、なるべく明るい声で会話を続けた。

国道沿いを走っていると、あるお店の前に行列を発見。
新しく開店した人気のラーメン屋さんだ。
ラーメンが大好きな主人の提案で帰りはここに寄り昼食を取る事にした。

主人の父親は約30年前、私たち夫婦が30代半ばの時に急に亡くなったが
お墓の知識もなく石材店の勧めるまま数百万円のローンを組んで購入した。

自宅から車で30分ほど。 
入口を抜けて小さな坂を登り階段を2回上り下りした迷路のような道の先にそのお墓はある。

私たちは入口で花と線香を買い線香点火機で火を点けようとしたが
主人はお墓の前でライターで点けると言いズンズンと歩いて行った。

私はまず本堂でお参りしようと違う道に進むと主人は慌てた様子で戻って来て 
小銭をバラバラと賽銭箱に放り込み3秒ほど手を合わせた。 
何を拝んだのだろう。

墓の前に着き、主人はライターで線香に火を点けていたが風が強く苦戦している様子だった。
風の当たらない奥に行きしばらくして戻って来ると線香置きの奥に線香を置いた。

掃除もすみ拝もうと何気なく線香入れを覗くと線香に火が点いていない。
主人に聞くとライターが壊れたとの事だった。

わたしはすぐに「じゃあ入口に行って点けてくるね」と、もと来た道を戻って行った。

線香点火機の前には私たちと同年代の夫婦が並んで線香をつけている。

私は少し離れた場所に立ち遠くを眺めた。
澄み切った青空に雪つりを施した木々が風に揺れている。

私はこんな清々しい光景を見る時間をプレゼントしてくれた主人に感謝した。(本当かい?)

迷路を抜けて墓にもどると主人は何やら遠くを眺めている。
そこには見慣れない旗が立っていた。 

私たちははからずもほぼ同じ時刻に違う方向の違う光景を眺めていたのだった。

主人は私に気付くと「あの旗は何だろう」と聞いてきた。
私はじっと目を凝らして見たが文字は読み取れなかった。

「何の旗だろう。いつもは見かけないよね」と答えると 
主人は何も言わず墓の前に立ち手を合わせた。

謝罪、ねぎらい、感謝の言葉はどれも聞くことはできなかった。

私は墓の前に立ち 
≪今年も家族皆、それぞれの立場で明るく前向きに生きて行くので 
どうか上から見守ってください≫と手を合わせた。

あの旗には何が書いてあったのだろう。





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プロフィール

しろネコ

Author:しろネコ
今69歳。60歳の定年まで約30年。
妻、母、主婦、仕事と休みのない生活でした。
今、夫との卒婚生活も軌道に乗り、興味ある事には何でもチャレンジ。
自由な今を楽しみます。

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